物価高や新NISAの注目により、金融リテラシーは一部の専門層から「誰でも使いこなせる」段階へ──。日本のフィンテックは2026年、10年目の節目を迎え、大きな転換点に入っています。
金融とITが融合する「フィンテック」がどう私たちの生活やビジネスを変えていくのか。インフキュリオンの主席アナリスト・森岡剛氏が、2026年度を象徴する10のトレンドをピックアップしました。
トレンド①:銀行とスタートアップの“協業モデル”が加速
これまで「金融業界を破壊する」と見られていたフィンテック企業は、いまや既存金融機関との連携を深めつつあります。例えば、三菱UFJがロボアド「ウェルスナビ」を子会社化した事例や、三井住友カードが家計簿アプリに出資した動きなどが代表例。協業により「信頼性×イノベーション」を両立する戦略が定着しつつあります。
トレンド②:次世代金融インフラが本格稼働へ
レガシーな銀行システムから、APIベースの柔軟なITインフラへ。新規プレイヤーの参入やUX向上には、スピーディで拡張性ある基盤が不可欠に。「使いやすさ」が選ばれる時代です。
トレンド③:「1サービスで完結」は過去の話に?
ユーザー獲得戦略が複線化。例:資産運用アプリ×決済アプリ×ライフログ連携など、1社ではなく「複数のアプリを組み合わせて使う」ユーザーが増加。設計思想に柔軟性が求められます。
トレンド④:中小企業の“支払DX”が加速
企業間決済や請求書処理など、業務のデジタル化が一気に進行中。GMO×みずほ、三井住友×インフキュリオンなど、大手企業との連携を通じて、地方・中堅企業でも導入が進みます。
トレンド⑤:キャッシュレスの「棲み分け」が崩壊
これまで「高単価はクレカ、少額はQR決済」とされていたが、その境界が消えつつあります。選ばれる決済は「ポイント還元」「UX」「アプリの習慣性」で決まるように。
トレンド⑥:送金・資金移動サービスが多様化
個人間送金・フリマアプリ・越境送金など、利用シーンが一気に広がっています。送金が“銀行経由”ではないことが当たり前になる時代に。
トレンド⑦:日常生活や業務にフィンテックが「自然に」組み込まれる
買い物アプリで資産形成、SaaSで経費精算──「金融を意識しないフィンテック」が増加。目的主義・自動化の進展により、金融は“目立たなくなる”方向に進化しています。
トレンド⑧:デジタル証券市場が本格拡大
少額から投資できるST(セキュリティトークン)などが浸透。実物資産と連動する新たな金融商品の台頭が、個人投資家の資産形成を後押ししています。
トレンド⑨:生成AIが「金融の現場」に入ってくる
カスタマー対応、融資判断、審査プロセス、レポート作成など、多様な業務で生成AIの活用が始まっています。「人手不足×効率化ニーズ」の中で、AIが新しいチームメンバーに。
トレンド⑩:公的個人認証の“当たり前”化
マイナンバーカードをベースとした本人確認や契約手続きが、銀行・証券・不動産・医療に広がる見通し。国のインフラ活用がフィンテック普及のカギに。
2026年のフィンテックは「特別なもの」から「当たり前のインフラ」へと進化中。これまでの金融常識を塗り替える一年になるかもしれません。
